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HIYOSHI-K


敷地は周囲を住宅に囲まれた谷のような極端に細長い場所だった。そんな場所で求められたのは、明るく、風通しの良い家。セオリー通りに南にまとまった庭を取ると、庭に面さない奥の部屋は谷底のように暗くなってしまう。そこで、細長い敷地をあえて細長く分割し、東に光の落ちる庭を取った。そして、更に細長く、千切りをするように、東から、部屋、階段、スロープと建物のボリュームを縦に三分割した。そうする事で、全ての部屋はその庭に面する事ができ、庭からの光を享受できる。また、細長い敷地に対して、庭、部屋、階段、廊下をあえて細長くすることで、一般的なスケールの住宅には無い「長さ」や「距離」が感じられる、ちょっと遠い場所が生まれる。すぐ上とか、すぐ隣に見えている場所にすぐには行けない、近くて遠い、遠くて近い、そんな距離感が広さとはまた違う拡がりを与えてくれる。同時に、この住宅では表と裏を意識した。空が近く、木の床、高い天井で、温かく明るい表の空間。地面が近く、土間の床、低い天井で、静かな落ち着いた裏の空間。直方体のボリュームを床スラブと階段で斜めに立体的に分割した二つの世界を長いトンネルが繋いでいる。もう一つ、この表と裏は床の隙間の細長い窓で繋がっている。この窓には一般的なアルミサッシを使用した。現代の日本の住宅で欠かせなくなったアルミサッシは、特別な意味を持つに至ったと思う。それは内部と外部を間仕切る絶対的な境界。安価で施工も容易い絶対的な境界を、内部と外部、表と裏、水回りと床下に、ヒエラルキー無く多用する事で、無意識に刷り込まれた境界線を曖昧にする。表と裏の世界、ぼやけた境界、段々畑のようなスキップフロア、坂道のような階段、トンネルのようなスロープ、小さな箱に詰め込まれた様々な要素が谷を明るく照らしてくれる。家の中の至る所から子供の遊んでいる姿を見ることができる、文字通りの明るい家となった。


建築敷地 : 神奈川県
竣工年月 : 2018年4月
工事種別 : 新築
主要用途 : 専用住宅
主要構造 : 木造 地上2階
敷地面積 : 148.37m2
建築面積 : 63.15m2
延床面積 : 112.83m2
構造設計 : 鈴木啓/ASA 担当 : 竹中美穂
施工会社 : 河井建設工業 担当 : 蛯澤勝也
写真撮影 : 藤井浩司/ナカサアンドパートナーズ


Location : Kanagawa
Completion : April 2018
Construction type : New construction
Principal use : Private residence
Structure : Wooden Two stories
Site area : 148.37m2
Building area : 112.83m2
Total floor area : 63.15m2
Structure design : Akira Suzuki/ASA Staff : Miho Takenaka
Construction company : Kawai Kensetsu Staff : Katsuya Ebisawa
Photography : Koji Fujii/Nacasa&Partners Inc.


新建築住宅特集 2018年12月号 掲載


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© KANIUE ARCHITECTS